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救急救命士が教える「子どもの窒息事故」完全対策ガイド

こんにちは、救急救命士のkjです。教育・保育施設向けに注意点を整理した報告書が公表されました。今回は最新のこども家庭庁の食材整理表を基に、「子どもの窒息事故」について、お伝えします。

なぜ今、窒息事故対策が重要なのか

救急車で出動する「子どもの救急案件」の中で、窒息事故は最も緊迫する現場の一つです。特に1〜3歳の幼児期は、好奇心旺盛な時期と咀嚼能力の未熟さが重なり、窒息のリスクが高まります。

私が経験した中で忘れられないのは、3歳の男の子がミニトマトを丸ごと口に入れて窒息した事例です。幸い迅速な対応で一命を取り留めましたが、たった数分の判断が生死を分けることを痛感しました。

POINT: 近年の重大事故データによると「りんご」と「パン」による窒息事故が多発しています。普段から食べている身近な食材こそ注意が必要です。

年齢別・窒息リスクのある食材と対策法

子ども家庭庁の最新情報によると、年齢ごとに注意すべき食材が異なります。

出典:家庭こども庁(実施主体MS&ADインターリスク総研株式会社)

【離乳初期(5〜6か月頃)】

この時期は歯がまだ生えていない子が多く、全ての食材を「なめらかにすりつぶした状態」にすることが基本です。

【離乳中期(7〜8か月頃)】

前歯が生え始める時期です。「舌でつぶせる固さ」を目安に調理しましょう。

要注意食材安全な提供方法
葉野菜細かく刻み、やわらかく煮る
きのこ類とろみをつけたスープに少量
わかめ極細く刻み、軟らかく戻す

【離乳後期〜完了期(9〜18か月頃)】

徐々に前歯が生え揃い、「歯ぐきでつぶせる固さ」から「歯ぐきで噛める固さ」へと移行する時期です。

【2歳〜3歳6か月頃】

乳歯20本が生え揃う時期ですが、まだ大人より柔らかめの固さが適切です。

絶対に避けるべき危険食材と対処法

以下の食材は窒息リスクが特に高いため、提供方法に細心の注意が必要です。

◆ もち・白玉団子

粘着性が高く気道を完全に塞ぐリスクがあります。3歳未満には使用を避けるのが無難です。

◆ ミニトマト・ぶどう・さくらんぼ

球形で気道に入りやすく、皮があることでさらに危険です。必ず4等分に切り、皮も取り除くことをお勧めします。

◆ ナッツ・豆類

乾いた状態では非常に危険です。調理する場合は必ず加熱して形状を変えるか、ペースト状にしましょう。

◆ りんごとパン

厚生労働省の統計によると、意外にもりんごとパンが窒息事故の原因として多く報告されています。りんごは薄く切り、パンは小さくちぎって与えましょう。

救急救命士が教える窒息サインの見分け方

窒息が起きた際、子どもの年齢によってサインが異なります。

【1歳未満の乳児】

  • チョークサイン(喉をつかむ動作)を示さない
  • 手を上げて目を見開く特徴的な動作
  • 突然泣き止む・顔色が変わる

【1歳以上の幼児】

  • のどをつかむ動作(チョークサイン)
  • 顔色が急変し、よだれを垂らす
  • 声が出せず、咳も弱々しい

もし窒息が起きたら:緊急対応手順

ステップ1:状況確認と意識チェック

まず、落ち着いて子どもの状態を確認します。咳ができていれば、自力で異物を出そうとしている証拠です。咳は異物除去で最も有効ですので咳を優先します。

ステップ2:背部叩打法の実施

  • 1歳未満:片手に子どもをうつぶせに乗せ、顔を支えて頭を低くし、背中の真ん中を平手で連続5回叩く
  • 1歳以上:子どもの後ろから脇の下に手を入れ、肩甲骨の間を強く5回叩く

ステップ3:胸部/腹部突き上げ法

  • 1歳未満:胸部突き上げ法(乳頭を結んだ線の中央で少し足側を指2本で5回押す)
  • 1歳以上:腹部突き上げ法(みぞおちの下を手前上方へ5回圧迫)

参考:東京消防庁<電子学習室><命を救う~窒息の応急手当~>

注意: 口の中に指を入れて見えない食物を取ろうとすると、かえって奥へ押し込む恐れがあります。見える場合のみ除去を試みてください。

安全な食事環境づくり:現場からのアドバイス

◆ 食事姿勢の重要性

  • 離乳初期:口を開けた時に舌と床が平行になるよう調整
  • 離乳中期以降:足の裏が床につく高さのイスに座らせる

◆ 食事中の見守りポイント

  • 遊びながら・しゃべりながらの食事を避ける
  • 無理に完食させない、急かさない
  • こまめに水分を摂らせる
  • 口の中に食材が残っていないか確認してから次の一口

最近の事故事例から学ぶ

教育・保育施設において、給食中に4歳児がブドウをのどに詰まらせ、病院に救急搬送したが死亡が確認された事例があります。また、2歳児がアーモンドを食べた後に症状が出て、右気管支異物により6日間入院した事例も報告されています。

これらの事故は適切な知識と予防策があれば防げたかもしれません。

まとめ:日常的な予防が最大の対策

窒息事故は適切な予防対策で95%以上防げると言われています。この記事で紹介した食材の調理法や見守りのポイントを日常に取り入れることで、大切なお子さんを守ることができます。

何か質問や不安なことがあれば、コメント欄でお気軽にご質問ください。救急救命士としての経験を活かし、お答えします。

子どもの食事中の窒息事故を防ぎ、安全で楽しい食事時間を過ごしましょう!

【リンク集】

 参考こども家庭庁)

 応急手当(東京消防庁公式チャンネル)

ABOUT ME
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救命士から民間救急への挑戦ストーリー 40代、2児の父。 約20年間、救命士として現場の最前線で活動してきました。 持病の悪化で現役続行を断念。民間救急開業への経過や現役救命士のサポート情報を発信していきます。