「救急車を呼んだけれど、あと何分で来るのだろう」

家族が急に倒れたり、苦しそうにしていたりすると、待っている時間は長く感じるものです。
消防庁によると、救急車が現場に到着するまでの時間は、全国平均で約9.8分。2024年(令和6年)中の救急出動を集計した数字で、119番通報を受けてから現場に着くまでの時間を表しています。
ただし、これは「あなたの家に9.8分で到着する」という意味ではありません。出動できる救急隊の位置や道路状況などによって、到着までの時間は変わります。
そして、待つ間に優先したいのは、指令員の案内に従い、必要な応急手当をしながら本人の様子を見守ることです。
この記事では、平均9.8分の意味と、救急車が到着するまでにできることを解説します。
救急車の到着時間は全国平均約9.8分
消防庁の「令和7年版 救急・救助の現況」では、2024年中の全国平均は次のように示されています。
| 指標 | いつから、いつまでの時間か | 全国平均 |
|---|---|---|
| 現場到着所要時間 | 119番通報を受けてから現場に到着するまで | 約9.8分 |
| 病院収容所要時間 | 119番通報を受けてから医師に引き継ぐまで | 約44.6分 |
「救急車は何分で来る?」という疑問に対応するのは、上段の現場到着所要時間です。電話を切ってからでも、救急車が走り始めてからでもありません。
9.8分は「9分8秒」ではない
9.8分を分と秒に換算すると、約9分48秒です。
小数点以下の0.8分は、60秒×0.8=48秒となります。ただし、公表値自体が概数なので、秒単位の到着予測を表しているわけではありません。
平均時間は、自宅への到着予定ではない
平均には、短い時間で到着した出動も、長くかかった出動も含まれます。
そのため、「約10分以内に必ず来る」とも、「10分を過ぎたら異常」とも判断できません。
また、平均9.8分は、その間なら何もせず安全に待てるという基準でもありません。必要な応急手当は、救急車を待っている間から始めることが大切です。
「6分」「9分」「10分」――数字が違うのはなぜ?
インターネットや講習資料などで、異なる到着時間を見かけることがあります。その場合は、次の3点を確認しましょう。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 統計の対象年 | 何年の救急出動を集計した数字か |
| 統計の対象地域 | 全国平均か、特定の地域の平均か |
| 時間の測り方 | 通報から現場到着までか、別の区間か |
例えば、消防庁の同じ資料に掲載されている全国平均は、2023年中が約10.0分、2024年中が約9.8分です。対象年が違えば、数字も変わります。
また、全国平均と、自分が住む市町村や消防本部の平均は同じとは限りません。
資料名にも注意が必要です。今回使用しているのは「令和7年版」ですが、統計の対象は「令和6年中」です。資料が何年版かと、何年の活動を集計しているかを分けて見ると、数字を正しく理解できます。
救急車の到着時間が変わる理由
近くの救急車が出動している場合がある
近所に消防署があっても、そこにいる救急隊が必ず来るとは限りません。別の患者さんへの対応中で、ほかの救急隊が向かう場合があります。
東京消防庁は、出場できる状態にあり、現場に近い、または早く到着できる位置にいる救急隊に指令を出すと説明しています。病院から戻る途中の救急隊などが出動する場合もあります。
そのため、「近所の消防署から自宅までは車で数分」という距離だけでは、到着時間は分かりません。
救急要請の集中や道路状況も影響する
救急要請が重なると、近くの救急隊が対応できず、離れた場所から向かうことがあります。現場までの距離や道路状況、交通渋滞も、到着時間に影響します。
函館市も、これらを到着時間が変わる要因として案内しています。
ただし、これは一般的な要因の説明です。個別の救急車が遅れている理由を、全国平均や交通状況の印象だけで判断することはできません。
参考:函館市の救急に関する案内
救急車が到着するまでにできること
救急車を待つ間、すべての準備を済ませようとする必要はありません。応急手当と見守りを優先し、人手や余裕に応じて案内・準備を進めましょう。
1.指令員の質問に答え、必要な応急手当をする
119番では、救急車が向かう場所や本人の状態などを確認します。分からないことは、無理に答えを考えず「分かりません」と伝えて構いません。
「質問に答えている間は、まだ救急車が出ていないのでは」と不安になるかもしれませんが、通報中にも出動を進める運用があります。
例えば豊中市は、救急車が向かっている間にも詳しい情報を聞くと案内しています。質問が続いていることだけで、出動していないとは限りません。
応急手当を案内されたら、可能であれば電話をスピーカーにするなどして、指示に従ってください。
呼びかけに反応がなく、普段どおりの呼吸がない、または呼吸の判断ができない場合は、胸骨圧迫を始めます。周囲に人がいればAEDを頼み、届いたら音声案内に従ってください。
方法が分からない場合も、そのことを指令員に伝えましょう。
2.本人のそばで様子を見て、変化があれば知らせる
通報時には話せていても、待っている間に状態が変わることがあります。呼びかけへの反応や、呼吸の様子を見守ってください。
反応がなくなった、呼吸が苦しそうになったなどの変化があれば、通話中はその場で伝えます。
すでに電話を切っている場合は、再度119番に連絡し、「救急車を要請済みであること」と「状態の変化」を伝えてください。
東大阪市や湯河原町も、待機中に容体が変化した場合の再通報を案内しています。
参考:東大阪市の救急車を待つ間の対応案内/湯河原町の救急車到着までの案内
3.人手があれば、入口での案内を分担する
集合住宅では、住所に加えて、建物名・棟・階・部屋番号を正確に伝えます。入口が分かりにくい場合や、オートロックがある場合も、その状況を知らせましょう。
家族などが複数いる場合は、一人が本人のそばに残り、別の人が入口で救急隊を案内すると分担しやすくなります。
一方、一人で対応している場合は、案内のために必要な応急手当を中断しないでください。指令員に「一人で対応しています」と伝え、どうすればよいか相談しましょう。
| 対応する人数 | 優先すること |
|---|---|
| 一人の場合 | 指令員との連絡、必要な応急手当、本人の見守り |
| 複数人の場合 | 手当・見守りをする人を残し、ほかの人が案内や準備を分担 |
4.余裕があれば、持ち物と情報を用意する
厚生労働省は、救急車を呼んだ際に準備しておくとよい物として、次のようなものを案内しています。
- マイナ保険証または資格確認書
- 普段飲んでいる薬、お薬手帳
- 診察券
- 靴、お金
- 乳幼児の場合は、母子健康手帳、おむつ、タオルなど
ただし、探し物のために通報や応急手当を遅らせないことが優先です。
救急隊が到着したら、分かる範囲で次の情報を伝えましょう。
- いつ、どのような症状が始まったか
- 待っている間に、状態がどう変わったか
- どのような応急手当をしたか
- 持病、かかりつけの医療機関、普段飲んでいる薬
すべてを正確に思い出せなくても構いません。分かっていることと、分からないことを分けて伝えてください。
関連記事:マイナ救急とは?マイナンバーカードを活用した救急活動
救急車の到着と、医師への引継ぎは別の時間
消防庁が公表している全国平均約44.6分は、119番通報を受けてから医師に引き継ぐまでの時間です。
「救急車が病院まで44.6分間走る」という意味ではありません。
現場到着後には、本人の状態の観察、必要な処置、救急車への収容、搬送先の選定・受入確認などがあります。
札幌市も、救急車が停車している間に、車内で必要な処置や医療機関の手配を行っていると説明しています。
**救急車が動き出していなくても、救急活動は進んでいます。**また、医師への引継ぎ前にも、救急隊は状態に応じた観察・処置を行います。
なお、「44.6分-9.8分=34.8分」を病院までの走行時間と考えることもできません。現場到着後の時間には、こうした活動が含まれるためです。
参考:札幌市「救急業務の概要」
よくある質問
平均の約10分を過ぎても来ない場合は?
全国平均を過ぎたことだけでは、異常かどうかは判断できません。出動する救急隊の位置や道路状況などによって変わります。
本人の見守りと必要な応急手当を続け、状態が変わった場合は119番へ知らせてください。通報した住所や部屋番号の誤りに気づいた場合も、連絡して訂正しましょう。
電話を切らないと救急車は出動しませんか?
電話を切ることが出動の条件ではありません。必要な情報を確認して出動を進め、その間にも質問を続ける運用があります。
具体的な手順には地域差がありますが、質問が続いていても、焦って電話を切らず、指令員の案内に従ってください。
マンションの部屋に来るまでが平均9.8分ですか?
約9.8分は「現場到着」までの全国平均です。本人のそばに着くまでの時間と、必ずしも同じではありません。
集合住宅では、現場に着いた後に入口の解錠やエレベーター移動などが必要になる場合があります。消防庁の検討会報告書でも、「現着から接触・車内収容まで」を別の段階として整理しています。
住所だけでなく、建物名・棟・階・部屋番号、入口の状況も伝えることが大切です。
参考:消防庁「平成26年度 救急業務のあり方に関する検討会報告書」33ページ
一人で対応していて、持ち物を準備できません
必要な応急手当と見守りを優先してください。持ち物の準備をすべて終える必要はありません。
指令員に一人であることを伝え、状況に合った対応を確認しましょう。家族などに手伝ってもらえる場合は、案内や準備を分担してください。
まとめ:到着時間の目安を知り、待つ間の行動に備える
救急車が現場に到着するまでの時間は、2024年中の全国平均で約9.8分です。ただし、一件ごとの到着予定を示す数字ではありません。
待つ間は、次の順番を意識しましょう。
- 指令員の質問に答え、必要な応急手当をする
- 本人の様子を見守り、状態の変化を知らせる
- 人手があれば、入口での案内を分担する
- 余裕があれば、持ち物や薬の情報を準備する
普段から自宅の住所・建物名・部屋番号を確認し、持病や薬の情報をまとめておくと、いざというときに伝えやすくなります。
情報確認日:2026年10月5日
統計対象:2024年(令和6年)中
※到着時間や待機中の対応について、本文中にリンクした国・自治体の公表資料を基に作成しています。
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